建設業許可取得後の契約締結に関する義務

建設業許可を得ている建設業者は、工事の着工前に書面により契約を行い、その書面には工事内容や請負代金の額などの建設業法で定める事項を記載することが必要です。

建設業の請負契約では、他の契約と比較しても契約金が大きな金額であることが多くなります。また、建設業の業界ではほかの業界よりも建設業独自の商慣習が多くみられます。例えば、長年付き合いのある取引先からの下請け受注の際に契約書を作成しないことなどがあります。その結果、下請けへの請負代金支払いの先延ばしや工事の追加を求められるといった問題生じ、結果として発注者にも不利益になる場合が起こりえます。

こういった事態にならないよう、建設業許可を取得した事業者には、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として工事の着工前に建設業法で定める事項を記載した書面にて契約することが義務づけられます。

これは、発注者と元受けの請負契約者、または元受けと下請けとの間で結んだ請負契約を明確にしておくことで前述のような建設業に生じやすい後日の紛争を防止することを目的としています。発注者が国や地方公共団体等であった場合も同様に書面での契約が必要になります。

建設業法で定める契約書に記載すべきとされている事項は次のようなものです。

【契約書に記載すべきとされている事項】
・工事の内容
・請負代金の額
・工事着手の時期及び工事完成の時期
・請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
・当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
・天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
・価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第二条に規定する価格等をいう)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
・工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
・注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
・注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
・工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
・工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
・各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
・契約に関する紛争の解決方法」

また、契約内容そのものについても守るべき義務があります。例えば、請負った工事について自らそれを建設することなく他社に一括して請け負わせる行為や、他社から工事を一括して受ける行為双方が禁止されています。

さらに、建設業法では、注文者から請負代金の出来高払又は竣工払いを受けたとき、元請負人は支払の対象となった工事を施工した下請負人に対して、施工に相当する下請代金を1ヶ月以内に支払わなければならないとういう義務を定めています。この1ヶ月以内というのは、建設業界の慣習を踏まえて定められている内容にすぎません。一般的にはできる限り短い期間に支払わなければならないとされています。

建設工事においては、工事の請負人が資材の調達や人件費など工事の前段階で多額の資金が必要になります。そのため、発注者から元受け業者に対して前述のような前払い金が支払われることが慣例となっています。そして、元受け業者は、発注者からこのような前払い金の支払いを受けた際、下請け人に工事の着手に必要な費用を前払い金として支払うよう配慮しなくてはならないとされています。しかしながら、これはできる限り守るよう推奨されるいわゆる努力義務にすぎず、違反しても法的なペナルティは規定されていません。

自己の取引上の地位を不当に利用して工事原価に満たない価格で工事契約の締結を強制する行為や、契約後に自己の取引上の地位を不当に利用して当該工事に使用する資材等の購入先を指定し請負人の利益を害する行為についても禁止されています。

なお、特定建設業者についてはここに記載したもの以外にも契約締結に関して課せられる義務があります。

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神山行政書士事務所
代表 神山隆義



 

【略歴】

  1978年、栃木県生まれ
  中央大学法学部法律学科卒
  座右の銘:”信”は力なり

【所属・保有資格】

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  東京出入国在留管理局申請取次資格
  宅地建物取引士試験 合格
  日商簿記           など

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