発行後3カ月以内の「登記されていないことの証明書」とは

建設業の許可を得るための要件の一つに”欠格要件に該当しない”というものがあります。その欠格要件の一つに「精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」とされています。つまり、厳しい言い方になりますが、成年後見制度を利用している成年被後見人などの方は、原則として建設業の許可の”経営業務の管理責任者としての経験を有する常勤役員等”や”専任技術者”になることはできません。

成年後見制度では、後見制度(法定後見制度・任意後見制度)の適用を受ける場合、被後見人・後見人の氏名、住所、後見人の権利の範囲など、その後見に関する内容が東京法務局に登記され、特に法定後見の場合には登記されたことが成年被後見人の本籍地に通知されます。そのため、「登記されていないことの証明書」とは、成年後見制度の利用者を登記(登録)している後見登記等ファイルに登記がされていないことを証明する公的な証明書で、証明者が成年後見制度を利用していないことを証明する書類になります。

したがって、建設業許可の申請をする場合に、申請書に記載された常勤役員等や専任技術者が成年後見制度を利用していないことを証明するためにこの証明書の提出が求められます。

登記されていないことの証明書は、現在の住所や本籍地に関係なく、全国の法務局の本局で取得できます支局や出張所では発行していません。2024年3月より戸籍の証明については広域交付が始まりましたが、「登記されていないことの証明書」は制度の対象外です。また、東京法務局のみ郵送での申請に対応をしています。この場合、申請書を送付してから手元に届くまでに少なくとも約1週間程かかります。「証明事項」は「成年被後見人、被保佐人とする記録がない。」にチェックを入れます。

法人の場合は申請する会社の監査役を除く役員全員の証明書を、個人事業主の場合は事業主自身が登記されていないことの証明書を申請書に添付します。

身分証明書との違いについて

「登記されていないことの証明書」と混同されやすい書類として「身分証明書」があります。この身分証明書は本籍地のある市区町村で発行してもらうことができる書類で次のようなことが記載されています。

「身分証明書」に記載されている事項
① 禁治産又は準禁治産の宣告を受けたままになっていないこと
② 後見の登記の通知を東京法務局から受けていないこと
③ 破産宣告又は破産手続開始決定の通知を受けていないこと

まず、「登記されていないことの証明書」が法務局が発行するのに対し、「身分証明書」は本籍地のある市区町村で発行してもらうという違いがあります。

次に、記載内容についても違いがあります。禁治産又は準禁治産の制度は、2000年4月に成年後見制度に置き換わることで廃止されました。旧制度時、禁治産又は準禁治産の宣告の通知を受けた場合には戸籍に記載することでその管理がされていましたが、成年後見制度になることで以降の管理は東京法務局の後見登記等ファイルへの登記する方法に変更されました。

このとき、既に戸籍に禁治産又は準禁治産の記載がされていた方は、申告をすれば東京法務局の後見登記等ファイルへの登記がされ戸籍の記載事項が削除されることになりました。そのため、この申告をせずに本籍地に禁治産又は準禁治産の記載が残っている場合には成年被後見人等として東京法務局の後見登記等ファイルへの登記はされていません。したがって、「登記されていないことの証明書」だけでは欠格要件に該当しないことの証明としては不十分です。

そこで、2000年の3月31日以前に欠格事由に該当しないことを証明するためには従前どおり本籍地の市区町村が発行する「身分証明書」によって行うこととなり、2000年4月に成年後見制度に置き換わって以降の証明は成年後見人・被保佐人等に該当していないことを証明する「登記されていないことの証明書」によって行うことになりました。つまり、いずれの時点においても欠格事由に該当していないことを証明するためには身分証明書及び登記されていないことの証明書の両方が必要になります。

また、「復権」を得ない「破産者」も欠格事由に該当します。裁判所から「破産手続きの開始決定(旧:破産宣告)」を受けた場合、その方は「破産者」として職業その他に一定の制限ができます。しかし、手続きが進み、裁判所から借金返済義務の免除等の「免責許可」が下りるとこの制限が消滅し権利が通常の状態に「復権」します。この「免責許可」が下りなかった場合には破産者として市区町村の身分証明書に記載がされ、この状態であれば建設業許可の欠格事由に該当します。「身分証明書」はこの状態ではないことの確認のためにも用いられます。

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